2025年(令和7年)施行の法改正一覧
法令名 |
施行日 |
概要 |
労働安全衛生規則 |
2025年1月1日 |
その他所要の改正と、経過措置を設けることとする。 |
厚生年金保険法施行規則 |
2025年1月1日 |
3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例申出について、使用される事業所による確認を受けた場合には当該子と申出者との身分関係を明らかにすることができる証明書等や戸籍長抄本の添付を不要とする。 |
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針 |
2025年4月1日 |
家族の介護に直面した労働者に対する個別の周知・雇用環境の整備、3歳になるまでの子を養育する労働者のための所定労働時間の短縮、当該労働者へのプライバシーの配慮等を規定 |
雇用保険法施行規則 |
2025年4月1日 |
高年齢雇用継続給付の逓減給付率の修正、教育訓練給付関係の様式の改正 |
次世代育成支援対策推進法施行規則 |
2025年4月1日 |
一般事業主行動計画の策定・変更の仕組みの見直し、くるみん認定、トライくるみん認定及びプラチナくるみん認定の認定基準の見直し 等 |
労働安全衛生規則 |
2025年4月1日 |
安衛法第20 条、第 21 条及び第 25 条に基づく立入禁止や退避等の「危険性」に係る関係省令について、所要の改正を行う。 |
障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(段階施行2/2) |
2025年4月1日 |
除外率設定業種の除外率引き下げ、対象障害者の雇用状況を報告しなければならない事業主の範囲の見直しなど |
障害者の雇用の促進等に関する法律施行令(段階施行3/3) |
2025年4月1日 |
障害者雇用調整金の算定のための単位調整額を、現行の2万7千円から2万9千円に引き上げ |
厚生年金保険法施行規則 |
2025年4月1日 |
高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の併給調整に係る調整率の逓減率を改定する |
雇用保険法(段階施行3/4) |
2025年4月1日 |
自己都合の退職をした者が雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合、給付制限が解除され基本手当を受給可能に 等 |
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 |
2025年4月1日 |
残業免除の対象となる労働者の範囲の拡大、育児休業の対象の拡大 等 |
雇用保険法施行規則 |
2025年4月1日 |
子ども・子育て支援法の改正に伴う、雇用保険法施行規則等の一部改正 |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 |
2025年4月1日 |
雇用保険の育児休業給付に係る保険料率を0.4%→0.5%に引き上げつつ、保険財政状況に応じて0.5%→0.4%に引き下げることを可能とする 等 |
雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令 |
2025年4月1日 |
失業等給付に関する保険料率の変更、出生後休業支援給付金及び育児時短就業給付金に関する経過措置 等 |
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針 |
2025年10月1日 |
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前の時期の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取と配慮、「柔軟な働き方を実現するための措置」の各措置の具体的な内容の制定 等 |
2025年4月、労働安全衛生規則等が改正|安全措置の対象拡大
2025年4月1日より、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令が施行されます。この改正は、作業現場における安全措置の対象範囲を大幅に拡大するもので、企業の経営者や安全管理担当者にとって、影響が生じる可能性があります。
雇用保険制度は、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等や共働き・共育ての推進等を目的として、以下の点が変更されました。
・雇用保険の適用拡大(2028年10月1日施行)
・教育訓練やリ・スキリング支援の充実(一部は2024年10月1日、2025年10月1日施行)
・育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保(一部は2024年5月17日)
・出生後休業支援給付の創設(2025年4月1日)
・育児時短就業給付の創設(2025年4月1日)
・その他雇用保険制度の見直し(一部は2024年5月17日施行)
なお、施行日は、主に2025年4月1日が予定されていますが、制度ごとに若干差異があります。
労働者の中で働き方や生計維持の在り方が多様化し、雇用のセーフティネットを拡げる必要が
あるため、1週間の所定労働時間が「10時間以上」の労働者まで適用対象が拡大されました。なお、1週間の所定労働時間とは、「通常の週(祝日、夏季休暇等の特別休暇を含まない週)」に勤務すべき時間をいい、1週間の所定労働時間が変動し、通常の週の所定労働時間が一とおりでないときは、加重平均により算定された時間とし、所定労働時間が1カ月の単位で定められている場合には、当該時間を12分の52で除した時間を1週間の所定労働時間とします。
また、上記改正に伴い、被保険者期間の算定基準(雇用保険法14条1項・3項。賃金の支払の基礎となった日数が「11日以上」から「6日以上」へ、賃金の支払の基礎となった労働時間数が「80時間以上」から「40時間以上」へそれぞれ変更)、失業認定基準(労働した場合であっても失業日として認定する基準として、1日の労働時間を、「4時間未満」から「2時間未満」へ変更)等の基準が現行水準の2分の1へ変更されます。
2028年10月1日より施行が予定されており、これにより、週の所定労働時間が10時間以上の労働者で新たに雇用保険法の適用対象となる労働者は、現行の被保険者と同様に、各種給付(基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等)を受け取ることができるようになります。
2教育訓練やリ・スキリング支援の充実について
労働者が安心して再就職活動を行えるようにしたり、労働者の主体的なリ・スキリング等に対する支援をより一層強化・推進したりする観点から、給付制限期間の見直しや、教育訓練給付の拡充が行われました。
なお、教育訓練給付とは、労働者の主体的な能力開発を支援するため、一定の要件を満たす教育訓練を受講し、修了した場合(一部は受講中も可能)に、その受講費用の一部を給付金として支給するものをいいます(雇用保険法60条の2)。
以下、改正された内容を個別に見ていきます。
@自己都合退職者の給付制限期間の短縮等
現行法では、自己都合により退職した者が失業給付(基本手当)を受給する場合、待期期間(7日間。雇用保険法21条)満了の翌日から原則2カ月間(5年以内に2回を超える場合は3カ月)の給付制限期間が設けられていますが、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合には、当該給付制限が解除されます(同法33条1項)。
給付制限期間って何のためにあるんですか? 失業したらお金はすぐに欲しいですね。
主には制度の濫用を防ぐためです。制度の趣旨から給付を行わないことを適当とする理由がある場合に、たとえ失業していても一定の間は基本手当の支給を停止する期間を設けています。
今回の改正では、労働者が安心して再就職活動を行えるようにする観点等から、給付制限を解除する事由として、現行のものに加えて、離職日前1年以内、または、離職日後に、自ら雇用の安定および就職の促進に資する教育訓練を行った場合が追加されました。すなわち、退職前または退職後に教育訓練を受講した場合には、自己都合退職であっても、給付制限が行われなくなりました。
また、本改正に伴い、通達により、上記給付制限期間が「2カ月間」から「1カ月間」に短縮されました。
施行は、2025年4月1日からとされています。
高年齢者の雇用、2025年に施行される2つの法改正
高年齢者雇用安定法とは、企業における高年齢者の活躍を推進するための法律です。労働人口の減少が進んでいく現代日本において、これまで定年退職していた年齢層の雇用継続は、人材の確保につながります。
この高年齢者雇用安定法は、2021年4月に対象労働者の年齢が拡大されました。さらに2025年4月からは、次の2つの改正法が施行予定です。次項から詳しく解説します。
@「65歳までの雇用確保」の完全義務化(経過措置の終了) A 雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小 |
法改正その@ 「65歳までの雇用確保」の完全義務化(経過措置の終了)
高年齢者雇用安定法は2013年に法改正があり、定年年齢を65歳未満に定めている事業者に対し、「高年齢者雇用確保措置」を講じることが義務付けられました。ただし、これには経過措置(準備期間)が設けられていました。
2025年4月にはこの経過措置が終了し、「65歳までの雇用確保」が完全義務化されます。
これは定年を65歳に引き上げなければならないという意味ではなく、雇用している従業員のうち、希望者全員に65歳までの雇用機会を確保する義務が生じるということです。
具体的には、次に紹介する3つの措置のうち、いずれかを導入することが義務となります。なお、同法では70歳までの就業確保措置を「努力義務」と定めています。
また、具体的な取り組みを行わない企業にはハローワークから指導が入り、勧告や助言、企業名の公表などがなされます。
2025年4月の施行までに準備すべきポイント
2025年に施行される2つの法改正、「65歳までの雇用確保」の完全義務化、および、雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小を前に、企業が取り組んでおくべきポイントを解説します。
雇用契約の見直し
「65歳までの継続雇用」のために、新たに雇用契約を結ぶ「再雇用制度」を採用する場合は、労働条件の変更が想定されます。どのような雇用形態で、勤務時間や日数をどうするかなど、雇用契約の見直しをしておきましょう。「勤務延長制度」を採用する場合には、新たな雇用契約は不要です。
継続雇用制度の改定対応
「高年齢者雇用確保措置」の経過措置(準備期間)の終了にともない、継続雇用制度の対象者を「希望者全員」に改定する必要があります。
対象年齢や退職・解雇に関する事項は就業規則に定めることが必須ですから、漏れのないように対応しておきます。なお、就業規則を変更した際には、常時10人以上の従業員を使用する事業場ごとに、所管の労働基準監督署への提出が義務付けられています。
賃金制度の見直し
雇用形態にかかわらず、仕事内容や実力に見合った賃金制度を検討します。賃金の見直しにあたっては「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」をめぐる法改正、いわゆる「同一労働同一賃金」にも配慮する必要があります。雇用形態の違いを理由に、不合理な待遇差を設けていないかチェックしましょう。
2025年春に行われる主な法改正
2024年には労働基準法の適用猶予期間が終了し、いわゆる「2024年問題」が運送・建設関連業界を揺るがせました。さらに法改正の施行は今後も続き、2025年1月1日以降も新たな法改正が適用されています。その中で企業の法務や人事部門が注目すべきものが、以下に挙げる4つです。
●厚生年金保険法「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」(2024年10月1日施行済)
短時間労働者への社会保険適用範囲が拡大され、週20時間以上働く全ての短時間労働者が対象となります。
●フリーランス保護新法「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行」(2024年11月1日施行)
フリーランスや特定受託事業者の取引環境の改善を目指し、取引条件の明確化や報酬の適正化が図られます。
●雇用保険法施行規則「高年齢雇用継続給付の見直し」(2025年4月1日施行)
高年齢者の雇用継続給付に関する条件や給付額が見直され、働き続ける意欲を促進するための変更が行われます。
●障害者雇用促進法「障害者雇用の除外率の引き下げ」(2025年4月1日施行)
障害者雇用の除外率が引き下げられ、企業に対してより多くの障害者の雇用が求められます。
これらの法改正では企業も適切な対応が求められるので、ここからそれぞれの改正内容と、企業が事前に準備するべきことについて説明します。
短時間労働者に対する社会保険の適⽤拡⼤(2024年10月1日施行済)
厚生年金保険法の適用範囲が拡大され、これまでは厚生年金保険と健康保険の加入対象外だった、一部のアルバイトとパート従業員も加入が義務づけられます。対象になる労働者は所定労働時間が週20時間以上で、賃金月額が88,000円以上、さらに2カ月以上の雇用が見込まれて学生ではないことが条件です。
改正では従業員が常時101人以上の企業から、常時51人以上の企業へと対象が拡大されました。自社が対象になっている場合は、新たに加入が必要な従業員を確認して概要を説明したうえで、年金事務所に提出する資格取得手続きの準備をする必要があります。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行(2024年11月1日施行)
これはフリーランス保護新法と呼ばれる法律で、業務発注者とフリーランスとの間での取引条件などを規定するものです。立場が弱いフリーランスを、不適切な扱いから保護する目的で制定されました。フリーランスは従業員を雇っていない業務委託契約受注者に限られます。
発注者になる企業側は、業務委託の条件を書面か電磁的方法でフリーランスに伝える必要があります。施行により、委託契約書を交わすことが必要になるでしょう。条件に反した場合、公正取引委員会による指導や罰則などもあります。
⾼年齢雇⽤継続給付の⾒直し(2025年4月1日施行)
現在60歳以上65歳未満で雇用を継続し、雇用保険の被保険期間が5年以上の労働者には、⾼年齢雇⽤継続給付金が支給されています。現行の内容では60歳時点の賃金に対して、それ以降の継続雇用における賃金が75%未満になった場合、最大で賃金の15%が給付されます。
しかし2025年4月1日からは、この給付金が最大10%にまで縮小されるのです。さらに将来的には給付金を廃止することも検討されています。企業は給付金に頼らず高年齢労働者が働き続けられる職場環境を、早期に整備することが求められます。
障害者雇⽤の除外率の引き下げ(2025年4月1日施行)
障害者雇用促進法では、障害者の就業機会を安定的に確保するため、企業に対して法定雇用率の遵守を求めています。業種によっては障害者雇用が困難な場合があり、除外率制度を設けて、実際に雇用する障害者の人数を調整しています。
改正では、除外率の見直しが行われ、特定の業種において除外率が引き下げられます。その結果、対象企業が雇用すべき障害者の人数が増加することになります。企業側は必要な障害者の雇用人数を再計算し、採用計画全体を見直す必要があります。障害者が働きやすい職場環境づくりも、同時に進める必要があります。